税務関係情報

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2024-08-01

免税事業者から課税事業者になった年度の消費税申告の注意(棚卸資産)

令和5年10月1日からインボイス制度が始まりました。開始に伴い、これまで消費税が免税であった事業者の方が適格請求書発行事業者に登録し、課税事業者を選択するといったケースが多数に及ぶのではないでしょうか。 免税から課税に切り替わる年度の消費税申告では、棚卸資産について消費税額の調整を行います。


●免税期間中に課税仕入れを行った棚卸資産に関する控除税額の調整
 消費税額の調整を行う棚卸資産とは、通常は期をまたいで所有される商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、貯蔵品のことです。課税仕入税額控除は実際に仕入を行った期間中に計算されますが、棚卸資産に該当する仕入等は実際に売上が発生する時期と違う期になります。収める売上分の消費税から、その売上に対応する仕入分について棚卸資産の分については税額控除ができないという不利がないように、「棚卸資産に係る消費税額の調整」が適用されます。
(上記インボイス制度の開始に伴う適格請求書発行事業者に登録した事により課税事業者となった事業者はその登録日の前日の棚卸資産となります。)

●「棚卸資産に係る消費税額の調整」の具体例
 仕入税額控除の対象に該当する棚卸資産の消費税額の計算は、その棚卸資産の取得費用の額に110分の7.8(軽減税率が適用されている棚卸資産については108分の6.24)を掛けた金額となります。

【計算例】

→2023年12月期の控除対象仕入税額に①と②の調整額が加算されます。

(課税売上に係る消費税額)-{控除対象仕入税額+(棚卸資産に係る消費税調整額)}=(納付消費税額)※国税分
国税分の消費税額に地方消費税の税率(22/78)を乗じた金額を加算した額が実際に納付する消費税額です。


●「棚卸資産に係る消費税額の調整」の注意点
 以上説明してきた「棚卸資産に係る消費税額の調整」ですが、この適用を受けるためには、その対象となる棚卸資産の明細を記載した書類をその作成した日の属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存しなければなりません。
また、免税から課税に切り替わる事業者全てに適用されるわけではありません。消費税申告のうち、一般課税を選択している事業者のみが対象となります。簡易課税制度を選択している事業者や、「2割特例」を適用して納付税額を計算する事業者は対象外です。


 簡易課税や2割特例の説明は省略させて頂きますが、自分の事業がどの計算方法を選択すればメリットが大きいのか、といった疑問がありましたら担当税理士にご相談してみてはいかがでしょうか。

                                              作成者 萩原