税務関係情報

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2024-03-27

上場株式等の配当所得等に係る課税方式選択の見直し(個人住民税)を解説

上場株式等に係る配当所得等について、所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択できることが2017年度税制改正において明確化されておりましたが、2022年度税制改正により所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択できなくなります。


●改正前の課税方式
 上場株式等の配当所得については、従前より、源泉徴収有の特定口座による申告不要制度、申告分離課税、総合課税の選択について納税者が任意で選択でき、かつ、所得税と個人住民税で異なる課税方式を選択することが可能でした。課税方式の選択によって納税額が変わってくるため、うまく選択することによって節税することが出来ました。

 どの組み合わせが有利なのかは、配当以外にどれだけ他の所得があるか、株式の譲渡損失があるか等で変わってきます。例えば、課税所得が900万円以下で株式の譲渡損失がないのであれば、所得税の場合、「税率23%-配当控除10%」=13%になり、これに復興特別所得税2.1%を含めると13.273%となるので、源泉所得税の15.315%より少なくなり、総合課税が有利になります。
これに対し個人住民税の場合、源泉徴収による個人住民税の税率5%に対して、総合課税を選択する事により個人住民税の税率が10%となるため、2.8%の配当控除を考慮した場合であっても総合課税を選択するメリットがなく、申告不要を選択するのが有利になります。

●改正後の課税方式による影響
 2023年度の確定申告より上場株式等の配当所得について、所得税と個人住民税は同じ課税方式にしなければならないことになり、所得税で総合課税を選択すると個人住民税も総合課税になります。そうなると、個人住民税は「税率10%-配当控除2.8%」=7.2%となり、申告不要時の個人住民税の税率5%より高い税率となってしまいます。

 この改正により、改正前の例と同じ条件においての組み合わせの有利は、課税所得695万円以下であれば、所得税「税率20%-配当控除10%」=10%+復興特別所得税2.1%を含めると10.21%、個人住民税「税率10%-配当控除2.8%」=7.2%で、合算すると17.41%となり、申告不要時に徴収された源泉所得税15.315%+個人住民税5%の合算した20.315%より下回り、総合課税が有利となりますが、課税所得695万円以上900万円以下の場合、合算は20.473%と不利になってしまいます。


                                              作成者 村田