税務関係情報

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2023-08-15

直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度①

 2013年4月1日から「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」が開始され、制度の概要としては大きく変わっていないものの、相続税申告実務において関係する「贈与者死亡時における管理残高の相続税課税」については税制改正毎に変遷し、2023年度税制改正においても一部改正がありました。今回は制度の概要ならびに通常の贈与との違いについて説明し、次回は税制改正内容について解説します。

●制度の概要について
 教育資金一括贈与の非課税制度は、直系尊属である贈与者(親や祖父母など)が30歳未満の直系卑属である受贈者(子や孫など)に、取扱金融機関との教育資金管理契約に基づいて教育資金を一括で贈与した場合、贈与税を非課税とすることができる制度です。養子であっても法的に血縁関係が認められていれば制度適用の対象になります。

 非課税限度額は、受贈者1人につき、1,500万円(学習塾など学校以外への支払いは500万円が限度)です。(2026年3月31日までの間の特例)
(注)贈与が行われる前年の受贈者の所得が1,000万円を超える場合は、非課税制度を適用することができません。

 手続きは金融機関の窓口で行います。贈与者は贈与した資金の管理契約を金融機関と結び、受贈者名義の口座に一括で入金します。受贈者は教育資金の領収書や請求書を金融機関に提出することで、贈与税を非課税でお金を引き出せます(目的外の引き出しには贈与税がかかります)。受贈者が未成年の場合、親などの保護者が手続きを行います。

 受贈者が30歳になったとき教育資金口座にかかる契約は終了し、口座に残っていたお金は贈与税の対象となります。また、契約期間中に贈与者である親や祖父母が死亡した場合、その時点の残額に対して相続税がかかることがあります(この取扱いについて今回の税制改正の対象となったことから、次回に詳細を掲載します)。

●通常の贈与と教育資金の一括贈与の非課税制度との違いについて
 通常、扶養義務者相互間において通常必要と認められる教育のための資金を必要な都度贈与して、使いきっているのであれば、贈与税の課税対象にはなりません。このような場合は、あえて教育資金一括贈与の非課税制度を利用する必要はありません。
しかし、贈与された資金を目的外に充てた場合や、資金が残ってしまった場合は贈与税の対象になってしまいます。通常の贈与では、将来の教育のための資金を前もって無税で一括贈与することはできません。

 教育資金一括贈与の非課税制度は、資金の渡し方と使い方について条件を緩和していることが特徴です。すぐに使う予定はないものの将来必要になると見込まれる教育資金を、無税で前もって一括で贈与することが認められます。ただし金融機関に専用口座を開設して、資金を引き出したときは領収書を提出するなど、手続きが少し面倒になります。
また、教育資金一括贈与の非課税制度では、一度贈与すると贈与者の都合で資金を取り戻すことはできませんが、非課税限度額の範囲内であれば複数回に分けて贈与することが可能です。

                                              作成者 河越