税務関係情報

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2023-07-12

貸倒損失を損金算入するには・・・

 売掛金などの金銭債権等が回収不能になった場合、貸倒損失として損金の額に算入します。しかし、回収が不能となった時期の判断が難しいため、税務上では以下の要件を満たした場合に損金算入が認められることとなっています。

●法律上の貸倒れ
 金銭債権の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)
(1)会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生計画認可の決定による切捨て
(2)民事再生法の規定による再生計画認可の決定による切捨て
(3)会社法の規定による特別清算に係る協定の認可の決定による切捨て
(4)債権者集会での協議決定や行政機関・金融機関などのあっせんによる当事者間の協議により締結された契約で、合理的な基準による切捨て
(5)債務者の債務超過状態が相当期間継続し、金銭債権の弁済ができないと認められる場合に書面によって債務の放棄を通知した場合
 ⇒上記の事実が発生した事業年度において、切捨てられた全額もしくは書面で通知された金額が強制的に損金算入となる(貸倒損失として処理するかは問わない)。


●事実上の貸倒れ
 回収不能の金銭債権の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)
債務者の資産状況、支払能力等から全額が回収できないことが明らかな場合
 ⇒明らかになった事業年度において損金算入する(損金経理が必要)。
 ※担保物は処分後、保証債務は履行後に貸倒処理すること

●形式上の貸倒れ
 一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)
 ※売掛債権に限ります。
(1)継続的取引のあった債務者との取引停止後、1年以上経過したこと
(2)売掛債権の総額が旅費等の取立費用に満たない場合において、催促しても弁済がないとき
 ⇒取引停止後1年以上経過した日以降の事業年度又は弁済がないとき以後の事業年度において売掛債権の額から備忘価額を控除した金額を損金算入する(損金経理が必要)。


●損金算入するにあたり
 貸倒損失の要件についてご紹介しましたが、貸倒損失の要件は厳しく、要件を満たしていないと損金として認められず、お金は回収できないのに法人税は払わないといけない、ということになりかねません。
 根拠となる資料をきちんと用意し、慎重に検討して貸倒損失として処理するようにしましょう。


                                              作成者 桝本