税務関係情報

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2023-01-31

生命保険契約に関する権利と相続税評価

 相続税の申告をする際に問題となりやすい「生命保険契約に関する権利」について詳しく解説します。
生命保険契約において保険の契約者と保険料を負担していた人が異なる場合には注意が必要です。


●「生命保険契約に関する権利」も相続財産になるの?
 生命保険の契約者とその保険の被保険者が異なっており、保険事故が発生していない状況で契約者が死亡した場合、その保険契約を解除するならば解約返戻金、解約せずに満期になれば満期保険が受け取ることができる権利も相続税の対象となります。


●「生命保険契約に関する権利」は解約返戻金の額で評価
 この「生命保険契約に関する権利」の相続税評価額は、亡くなった日の時点で保険を解約したと仮定して計算した解約返戻金の額が評価額となります。
このとき、前納した保険料や保険会社からの配当金があれば加算し、解約の時に源泉徴収される所得税等があれば差し引いて計算します。

●「本来の相続財産」と「みなし相続財産」
 ただし、生命保険の契約者と保険料の負担者が同じかどうかにより、「生命保険契約に関する権利」は、「本来の相続財産」と「みなし財産」に分けられます。

・本来の相続財産
 例えば、亡くなった夫が「生命保険契約者=保険料負担者」であり、被保険者が子の場合には、本来の相続財産として扱われるので、遺言書や遺産分割協議書によって分けることができます。(相基通3-36(1))


・みなし相続財産
 例えば、亡くなった夫が「生命保険契約者≠保険料負担者」で保険の契約者が妻、被保険者が子であった場合は、生命保険契約者である妻の相続財産となりますので、遺産分割の対象外として取り扱われます。(相法3①三)


 どちらの場合も被保険者である子は死亡していないので、保険金は発生しません。そのため「生命保険契約の権利」を引き継いだことに気づきにくいため注意が必要です。
 また、契約者と負担者が異なる場合には契約者と負担者との間の支払保険料の贈与となり、それに贈与税がかかる可能性があることについても注意が必要です。

●税務署はなぜ把握できるの?
 保険会社は契約者が変更された時点で、税務署に支払調書を提出します。
支払調書とは、特定の支払をした事業者が、支払の内容・明細を記載し税務署に提出する書類の事で平成30年1月1日より「死亡(相続)による契約者の変更の場合」でも支払調書の提出が必要となりました。


 相続税の計算の際には、「生命保険契約に関する権利」の加算漏れがないか確認しましょう。


                                              作成者 木村