税務関係情報

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2023-01-11

インボイス制度下でもインボイスの保存が不要な場合とは?

 2023年10月1日から始まるインボイス制度のもとでは、インボイス発行事業者が交付するインボイス(別名「適格請求書」)の保存が仕入税額控除の要件となります。
しかし、ある一定の取引においては、インボイスの交付を受けなくとも帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることとなっています。それはどんな取引でしょうか?


●帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合
 国税庁のインボイス制度に関するQ&Aでは、インボイスの保存がなくとも一定の事項を記載した帳簿の保存があれば仕入税額控除の要件を満たす場合として、以下の取引を列挙しています。

① 3万円未満の公共交通機関による旅客運送
② 3万円未満の自動販売機等からの商品の購入
③ 郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス
④ 適格簡易請求書が使用時に回収される取引(入場券など)
⑤ 適格請求書発行事業者でない者からの再生資源等の仕入
⑥ 古物営業を営む者による、適格請求書発行事業者でない者からの古物の仕入
⑦ 宅地建物取引業を営む者による、適格請求書発行事業者でない者からの建物の仕入
⑧ 質屋を営む者による、適格請求書発行事業者でない者からの質物の仕入
⑨ 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・通勤手当等

 このように、少額のバス・電車賃や自販機での飲料等の購入においてはインボイスの保存が不要となるほか、リサイクル業者や中古車販売店がインボイス発行事業者でない一般消費者から仕入を行う場合などもインボイスの保存が不要となっています。

 なお、①・②の取引で「3万円未満」かどうかの判定は、1回の取引全体の税込価額で判定します。したがって、電車で乗り継ぎを行う場合や複数人分の商品を同時に購入する場合などは、その総額で判定することになるので注意が必要です。

●帳簿に記載が必要な一定の事項とは
 では、上記の取引に際して帳簿への記載が必要となる事項は、どのようなものでしょうか。
まず前提として、インボイス制度下で仕入税額控除を行うには、インボイスの登録番号が付された請求書とともに以下の事項を記載した帳簿の保存が必要とされています。

・相手方の氏名又は名称
・取引年月日
・支払対価の額
・資産又は役務の内容(軽減税率を含む場合はその旨)

 帳簿のみの保存で仕入税額控除を行う場合には、これに加えてさらに以下の2点の記載が必要となります。

・帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引に該当する旨
 例:「入場券」、「3万円未満の運賃」など
・相手方の住所又は所在地

 ただし、上記取引のうち①運賃・③郵便・⑨旅費については、相手方の住所又は所在地の記載は不要とされています。
また、⑤で再生資源の仕入先が事業者以外の場合や、⑥から⑧でも古物営業法などの法令により相手方の住所氏名の記載が求められている以外の取引においては、住所又は所在地の記載は不要となります。裏を返せば、②自販機での購入と④入場券については、必ず住所又は所在地の記載が必要ということになります。

 2023年10月からのインボイス制度開始を前に、会社の経理を預かる方々においては、いま一度、社内の経費精算と請求書保存の規定をご検討頂ければと思います。


                                              作成者 根津