税務関係情報

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2022-05-31

低解約返戻保険等の通達改正

 国税庁は令和3年6月に、改正所得税基本通達36-37「保険契約等に関する権利の評価」を公表しました。
 これまでは、法人が役員や従業員に対し保険契約の権利を支給(名義変更)する場合、その権利は支給時の解約返戻金の額で評価されていましたが、今回の改正により、解約返戻金額が著しく低い一定の保険契約については、解約返戻金額ではなく支給時の資産計上額で評価するとの見直しがなされました。

●改正の背景
 改正の背景には、法人で契約した保険を個人へ名義変更することにより所得税額を低く抑える節税スキームがあります。
問題とされたのは、解約返戻率が最初の数年だけ非常に低く、ある時期を境に急激に高くなるような保険商品で、解約返戻率が低い時期に法人から個人へ契約を譲渡し、解約返戻率の高い時期に解約すると、名義変更を受けた個人はわずかな支払で多額の解約返戻金を受け取ることができました。これに加えて、解約返戻金は一時所得となるため、保険料分を毎月給与で受け取るよりは税率を低く抑えることができましたが、この改正により、こうした節税スキームが封じられることになりました。

●改正通達の内容
 具体的には、名義変更時の解約返戻金相当額が法人の資産計上額の70%を下回る場合、当該保険契約は資産計上額で評価されることになります(一部の復旧することのできる払済保険等は、法人税基本通達9-3-7の2の定めにより損金算入した金額を加算します)。
 また、本改正通達による評価は、令和元年7月8日以降に締結した保険契約から適用され、同日前に締結された保険契約については、原則として従前の評価方法が適用されます。
 なお、法人から個人への名義変更だけでなく、法人間での名義変更に関しても本改正通達と同様の扱いが適用されます。

●今後の展望
 今回の見直し対象にはなりませんでしたが、保険料の一部を前払保険料に計上する「解約返戻率の低い定期保険等」や「養老保険」などについても、国税庁は今後、保険商品の設計などを調査したうえで見直しの要否を検討するとしています。
保険契約の税務上の取扱いに関しては、今後もさらなる改正があることが予想されるため、引き続き注視が必要です。